日本発の技術・サービスを世界へ

世界に貢献する発明を育てる−2019/3/16



ここ10年来「日本発の優れた技術」を世界の産業や社会に貢献できる基盤技術に育てる支援活動をしている。

従来の対症医療を変える可能性を持つ「細胞シート再生医療」、食品の流通網を変革するかもしれない各種の鮮度維持デバイス、日本が出遅れた有機農業を一気に普及できる有機水耕栽培技術、そのほか院内感染症の即効薬、遺伝子改変ウィルスを使った低コストで効果の高いガン治療薬等。日本発の発明技術の数々が世界を救う日を心待ちにしている。

昨年持込まれた身体の健康維持や食材鮮度維持効果を発揮する「抗酸化植物ミネラル」もその一つと言える。

最近“愛媛のチョコブリ”という養殖ブリが話題になった。餌にチョコレート加えると、水揚げ後切り身にしても通常に比べて3、4日鮮度が長く保てるというもの。チョコレートの抗酸化作用が、切り身の酸化を抑えブリが褐色化することを遅らせると解説されている。魚に限らず抗酸化物質を上手に摂取すれば、多くの病気の原因となる活性酸素を除去できる。高齢化と共に徐々に短くなり最後には人体の細胞分裂を終わらせてしまうテロメア(遺伝子染色体)を維持し、長寿へ導くとの国際的な研究成果も紹介されている。

科学実験レベルで抗酸化力が高いのは水素、水素水や水素泡風呂が人気である。また、チョコレートやワイン等に含まれるポリフェノールやビタミンCなども体に良いと紹介されることが多い。ただ、残念ながら口から摂取しても、胃や腸、肝臓などで分解されてしまいほとんど抗酸化効果を確認できないのが実態である。特に水素は極めて不安定で一般社会では使いづらい。

こうした中で、ある日本の化学者が、様々な野生の植物や海藻を灰にし、更に毒性を除去するため高熱をかけてマグマ状に溶かすことで、安全で抗酸化力を発揮する「植物ミネラル」を作り出すことに成功した。20年以上をかけた独自開発の成果である。彼の植物ミネラルは、安全で安定的なうえに水素以上の極めて高い抗酸化力(酸化還元電位)を発揮する。驚くべき点は他の抗酸化物質とは異なり抗酸化の即効性が確認できることである。経口摂取した1〜2時間後に血液中の抗酸化力が1割以上アップするという検証データも出ている。

安全な抗酸化物質が簡単に摂取でき、身体中の血管を巡って免疫力も上昇すれば、人間の健康増進に有益である。治験などの本格試験が必要だが、末期がんや重篤な糖尿病患者等が藁をも掴む気持ちで試して回復した例も多くあるという。

この技術の実用化を支援してわかったことだが、実はこの植物ミネラル、既に多くの企業が水面下で様々な食材に使用している。養殖ウナギや明太子、最近話題のふわふわパンを始め、通常は健康によくない亜硫酸塩(酸化防止剤)が添加されるワインでも、ある欧州業者は植物ミネラルの酸化防止力を活用し安全で味の良いワインを輸出している。

しかし業界や生産者が植物ミネラルの効果を公に認めて、業界全体で広く推進しようとする動きは殆どない。折角の日本発の革新技術が商売の影に隠されてしまっている。

画期的な価値を発揮する発明技術を世の中に早く広く浸透させるためには、先ず開発者が科学的なエビデンスを示す努力を行うことが第一だが、最も重要なのは、そのコンセプトを社会に知らせて浸透させる支援体制、個別業者によるノウハウ秘匿を避けるオープンな場作りと啓発活動ができる人材育成が必要である。

革新的な鮮度維持技術や安全コンセプトは、従来の安全神話、慣習や秩序、規制の価値を崩してしまう。これまでの存在価値を維持したい産業や行政とは様々な軋轢が発生する。一般消費者が、画期的ノウハウや技術コンセプトを知って「こっちの方がいいね!」という前に、農業・水産関係者は自分だけの商売を得ようとしがちで、旗振り役の組合などですら、オープンなエビデンスづくりに協力し技術普及に努めることは稀である。狭い国土と深刻な高齢化という課題を抱える日本の農業・水産部門は長期的なビジョンを持ちにくい。植物ミネラルのように健康で長寿な日本に欠かせない画期的技術を普及させるためには、熟練生産者があえて革新的技術を学ぶ教育の場やインセンティブ、生産者側が消費者や小売業界と新技術を共有しオープンに事業連帯できる場を作ることが必要である。(2019/3/16)