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ドバイ雑感-2015/08/15


ドバイ雑感:新たな「日本」を輸出する仕組

戦後70年、アジア各国との関係が新たな局面を迎えつつある中、産油国である中東湾岸地域との間で共に発展する新たな道を築くことが問われている。中東の現状と日本への評価や期待を知るべく、その中心国ドバイを訪れた。

ドバイは世界一の高さを誇る800m超の建物ブルジュ・ハリファなどの高層ビル群やパームツリー型の人工島、人工の砂浜と豪華なヨットの帆を模した形のホテル、超巨大なショッピング街ドバイモールやドバイ競馬、F1レース、ゴルフ場など近未来都市の様相である。中東湾岸地域の繁栄を象徴する世界へ向けてのショーウインドウの役割を果たしている。元々ドバイは古くから中東湾岸地域やアフリカなどの商業上のハブであり物流の中継地でもある。中東の金融センターとして金、石油、中古車などの取引も活発で、ドバイ国際空港は年間7,000万人の乗降客があるという。

繁栄の一方で、湾岸諸国に共通する社会インフラ整備の課題も山積しており、優れた技術やインフラを世界中から求めている。ゴミを分別せず砂漠に埋めている湾岸諸国にとって、効率的なゴミ処理プラントは、環境面でも喫緊の課題である。人工衛星から見て「地球上で最も明るい」ドバイの照明やエアコンの電力の削減や、新たな自国農業技術の獲得や医療、交通システムなど優れたソリューションが求められている。

あり余る資金を活かして最新の技術、イノベーティブで信頼性ある製品をドバイが世界で最初に採用したいという意欲があり、品質の高い日本ブランドの製品やシステムに対する期待は大きい。こうしたニーズと期待に日本企業は応えられているのか?

日本の大企業は、海外での事業展開に自信がないためか未だ総合商社に依存している。中東湾岸地域での日本の商社の情報力や競争力などにかなりの限界があるにも拘わらずである。例えば、ドバイ政府のメガソーラープロジェクトでは、かなり前から日本サイドからのプレゼンが依頼されながら、商社にはその情報は全く入らなかったという。日本のソーラー製造企業は「商社が知らないような話は信じられない」として動かず、他国企業の後塵を拝した。

中小企業では、海外投資の資金や取り纏めのノウハウも限られる。中東では事前に現地合弁会社の設立を要請されるが、独特の保証人制度などもあり日本とは仕組みが大きく異なる。現地から見れば単に売りに来てそれで終わりでは、国の産業育成上の価値は低い。こうしたすれ違いから日本企業が多くの案件をみすみす取り逃しているとのことである。


日本と中東との長期的な関係作りをビジョンとして、こうした現地ニーズを的確且つ迅速に捉え、1企業の体力や能力を超えてプロジェクトとして実現支援する「情報・金融のプラットフォーム」を新たに作れないだろうか。

王族が国を動かす中東では金融機関トップが重要な鍵を握っている。例えば両国の金融機関が現地に住む日本通の人達とも連携して、現地での確かなニーズ情報を迅速に捉え、日本サイドの企業群にプロジェクトとして発信する。資金や法務・実務面を支援するチームを組成しておけば、日本の中小企業や大手商社頼みの大手企業も情報の真偽に翻弄されず迅速に事業行動に移せるのではないか。

安倍内閣の成長戦略の目玉として「日本企業によるインフラ輸出」が挙げられている。しかし相手国と一体にならずに一方的にインフラを押しつける訳にはいかない。資源国として日本のエネルギー供給を支え続ける国、イスラム圏であり世界から注目され、そこで採用されたインフラは湾岸諸国に導入される可能性が高いとされる国、世界経験の浅い個別企業の採算や能力に任せるのではなく本気でこの国のインフラ構築に力を注ぐのが日本の当然の戦略と言えるだろう。

中国が必死で自国エネルギー・食料確保のためにアジア中東戦略を取り始める中で、日本はアジアや世界のために力を注ぐべき地域やテーマを定め、現地のインフラニーズや民間力を最大限に活用して実現する仕組を作る。新たな日本の姿を世界に見せる時が訪れたとの感想を抱いて40度の猛暑のドバイから帰国した。(2015/08/15)